忍者ブログ
更新停止しました。 ありがとうございました!
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

マルコ誕生日記念!③
無理矢理終わらせた感満載でもう…っ

後日談…後時談?的なこと、というか言い訳に続きます…。
ごめんなさいマルコ…色んな意味で…。
ああ、ひどい…

炎の翼は、ごうごうと音を立てる風に吹き消される気配もなく羽撃いて、抜けるような空を滑る。
仏頂面の鳥は、実はなかなかに機嫌が良くて、そして少しばかり急いでいた。

こんな日に悪いな、と送り出した温かい声に、関係ないと笑って飛び発ったのは昨日の今頃。
飲みたい食いたいと素直な兄弟達が、律儀に自分の帰りを待っている筈はないから、本人不在の前祝いに昨夜の宴は盛り上がったのだろう。
そして程なく、既に出来上がっていたり、二日酔いに真っ青になっていたり、そんな奴らが、臆面も無く「待っていたぞ」と騒ぐところまで、容易にマルコの目に浮かぶ。
それから、きっとその中央で、最も眩しく笑うだろう雀斑の顔。

どこまでも仏頂面な鳥は、また少しスピードを上げて、やがて、
遠く小さく見えて尚、後に伸びる白い軌跡が力強さを語る、偉大な鯨を捉える。


「ッ…まだ見えねェーーーーーーー?」
「お、おれの勝ちィ」
「だァー!お前、2分くれェ耐えろよな」

見張り台を見上げたエースの大声は、2時間ほど前から次第に頻度を上げている。
本当は、自分が登っていて待ちたいというのに、次に叫ぶのは何分後か当てる、というゲームで賭け始めた兄に阻まれている。
そんな事だから、最も自分を拘束している兄に負けさせてやりたいと思うのに、つい気の儘に叫んでしまって、すると何故か、そいつ…サッチが高確率で勝ちを攫っていくのだ。

「ありがとよ、エース。次は3分で頼むぜ」
「うるせェ」
「その調子じゃ、何ヤるか決まったみてェだな?」
「…おう」
「よしよし。フォローは任せな」
「ほんとか?」
「おうよ、人払いくれェ」
「じゃ、助けてくれよな!」
「あァ?…エース、お前一体どんなプレイ……あーぁ。」

次の上陸での遊び賃を心躍る程に儲けたサッチはそろそろ退き時と踏み、これがラストゲームと最も大きくベットして、タイミングを操るべくエースの肩に腕を回した。ちなみにこれは、反則行為ではない。エースが声を挙げたくなる衝動は、基本的に会話の流れだとかいうものに左右されずにやってきて大体唐突で、エース本人の意思ともあまり関わりがないので操るのは至難の技なのだ。
それでも操る自信のあったサッチは言葉の途中で、あからさまに自分から興味を無くしたエースの表情から背後の光景を理解し、負けを悟って肩を竦める。
そして、見張り台に居た兄と、同時にエースが叫ぶ。

「「マルコだ!!!!」」

どよりと、広まったざわめきが西の空に集まり、次の瞬間、爆発的に歓声が上がる。
「やっと主役のおでましだ!」
「マルコ隊長ー!おめでとうございます!」
「待ってたぜェ!」
それぞれに意味を成す無数の言葉達は分厚く分厚く重なる。
それは、未だ上空のマルコにも届く鯨の咆哮だ。

「おーおー来やがったな!ったく、あと3分待ってくれりゃあな………で、ナニしようってんだよ?…お、エース?」
一声加わっただけで満足したサッチは、それよりも下世話な事が気にかかって末弟の方を振向いたけれど、もうそこにエースは居なかった。

青い炎の鳥は、ぐるりと大きく旋回しながら高度を下げる。
吠え続ける鯨の背中へ、舞い降りるさなかに炎が集束し、人の姿のマルコが降り立つ。
そこで鯨は、もうひと吠え。
せーので息を合わせるなんて芸当は出来ない荒くれ達の、全く綺麗には混ざらない個々の言葉が、今度はそれなりに聞き取れた。
さあ飲め、お帰り、祝ってやるぜ、誕生日おめでとう。
人の姿になったマルコは、ほぼ道すがらに予想したままの光景に表情が緩むのを自覚して、かろうじて、呆れたような笑顔に変えた。
けれど、1つ、大きな物が足りない。
着地の為に選んだスペースだが、酒瓶や骨つき肉を握り締めた兄弟が距離を詰めて来ていて、間もなく埋め尽くされそうだ。これに呑まれると、益々もって探し難くなるだろうと、鋭く意識を巡らせた、瞬間だった。

「マルコォーー!!!」

負けじと張り上げられた大声に、未だ最高潮だった筈の歓声が俄に落ち着く。
誰より初めに声の主を見つけたのは勿論、大声が指した名前の本人で、
そう言えば一番分かり易く彼の帰りを心待ちにしていた若者が居たな、と思い出した周囲がそれに続いた。
エースは何故だか、マルコを中心に集まりつつあった円の最も端から、更に外れた船縁にギリギリの所に立っていて、マルコを不敵に睨みつけている。
そして。

「マルコ、…受け取れ!!」

マルコだけを見つめて叫ぶと、ダンッ、と立っていた床板に弾けるような衝撃を残し、エースは走り出した。
腕を広げて駆け寄る姿を見て、標的であるマルコ以外の兄弟達は控えめに退き、道を空ける。
標的。そう、マルコの事を、標的だと、誰もが感じた。それは攻撃目標を指す言葉な筈で、実際エースは、とてもじゃないが皆を温かで微笑ましい抱擁を見守るような気分にはさせてくれない。あれは、突進だ。
瞬く間に距離を詰めるエースが、失速する気配は無い。マルコも動かない。最早周りは、チキンレースを観戦している気分だ。
本来、エースの行く道だけで良い筈だが、マルコを挟んだ反対側にも道が出来た。エースが走る直線上には、もうマルコしか居ない。
マルコまで、あと3歩。エースは身を屈めた。
あと2歩。更に猫か何かのように身体のバネを縮め、伸び上がる準備を。
1歩。エースの踏み出した脚は、マルコの立つ正面から方向を逸れて、地を蹴った。


この、時間にすれば数秒の間に凝縮されたドラマチックな機微を読み取り共有出来た兄弟達は、流石に最も海賊王に近い男の船のクルーである。
そんな彼らは、顎を落とし、目を飛ばして、一斉に驚愕しながら、
全力のラリアットを食らい、そのまま首に引っ掛かった腕にもの凄い勢いで引き摺られる1番隊隊長と、叫びながら諸共に船縁を越え海に落ちて行く2番隊隊長を見送った。

「おめでとおおおおおーーー!!」
「「えええええええええええーー!!!??」」




まるで溶け出すように、自分から力が抜けて行く。
ごぼごぼと、衣服が連れて来たらしい空気の玉が肌を這ったあと薄情に逃げ、沈み行くばかりの自分から遥か遠離る。
視界の端で漂う黒髪は、上で見るより柔らかそうに、ゆらゆらと揺れている。
ただ無力に救助を待つばかりの状況で、マルコは淡々と移る思考に漂った。

なんだって、こんな日に、こんな目に。
苦しさにもがく力すらも奪われる。
着水の寸前にありったけ吸い込んだ空気を洩らさないようにと息を止める力もなくなりそうで、マズいなと思ったら、目の前のエースは阿呆面に口を半開き、えらく弱々しくながら笑っていて、空気を蓄えるなんて事は考えてもいないようだった。

あれだけの数に見守られながら落ちたのだ。おそらく助かる。
でなければ、こんなくたばり方はあんまりだ。
誕生日が、命日か。ふと笑えて、こぽりと小さく空気がまた逃げた。

助けは、まだか。阿呆面越しに、水面を仰ぐ。
今逃げだした空気の玉が、昇る程に煌めいて、ユラユラと光る水面に迎えられる所だった。


蒼い。


そう言えば。
戦闘の最中、熱くなり過ぎたこいつを最前線から引き剥がした事があった。
こっちは頭に来ているというのに、おれの翼に囲まれたこいつはその時も阿呆面で笑い、
海のようだ、そう言った。

もう一度、エースを見ると、黒い瞳はおれを見ていた。
やけに力の無い顔に、嫌な風に胸がざわつく。
間抜けに口なんざ空けているからだ。

苦しいし、だるいし、確実に死にかけているこの状況で、なおこの男を愛しく思うのはどういう訳だろう。
海に嫌われた海賊が二人、海に抱かれて抱き合っている。
なんだか再び、最低に笑えてきて、なんとか含んだままでいた空気を、目の前の阿呆面に与えてやった。



洩れ出て、水面を目指す玉を追う。
けれど閉じて行くこの目は、再び開く事があるだろうか。
ああ、意地でももう一度開けてやる。
死んでたまるか。
最期の情景がほどけていくリーゼントだなんて。


拍手

PR
| prev | top | next |
| 348 | 347 | 346 | 345 | 344 | 343 | 342 | 340 | 341 | 339 | 338 |
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール
HN:
とど”まるこ”とをしらない人達
年齢:
13
HP:
性別:
女性
誕生日:
2010/11/22
職業:
モビーディック観察
趣味:
妄想
自己紹介:
マルコがエロ過ぎて心がやす”まるこ”とがない やすまると
マルコが男前過ぎて萌がしず”まるこ”とがない しずまるです。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ  [PR]
  /  Design by Lenny