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2024.11.15 Friday
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現パロX`mas第1弾
2010.12.25 Saturday
まずは、作家×メッセンジャー(…というか、運送会社のバイト君な妄想になっておりますが)の二人のクリスマス。
この人達の細かい設定は追々…
短めですが、続きます。
あんまり遅くならないうちにまとめたい…と、思っております…。
今朝方、訪れた担当者は、出来立ての原稿を満足そうに抱え、何時も通りに化粧でしっかり武装した顔でまじまじとおれを見て、ひどい顔だと笑った。
『全く、ご執心だな。
いいクリスマスを。…しっかり休んでおけよ。』
公私共に多くの事情を知る彼が、気遣うような言葉に下世話な意味を含ませたのは間違い無かったが、独特の気品でそれは綺麗に包まれていた。
クリスマス
~現パロ 作家×メッセンジャーの場合~ 1
イゾウの言葉に従った訳ではないが、目覚めたのは夕方だった。
今日のTVは、どの局もどこか賑々しく浮かれている。
そして自分も、画面から伝わるその空気に素直に取り込まれていると気付いて、煎れたての珈琲の好ましい香りに鼻を鳴らすのと同時に自嘲する。
世間の季節やイベントを情報と捉え、そのものは他人事に感じるこの生活は、もう10年を云うに越えていたのに。
付けたままのTVの音を聞き流し、ソファに腰掛け、読みかけの本を手に取る。
つい一月ほど前に買い換えたばかりのソファが少しずつ馴染んで、その居心地の良さで自分を癒してくれていることに、こうしたゆったりした時間の中で気付く。
どれほど頁を捲っただろうか、何時の間にか冷えきった珈琲を飲み終えた頃、来訪者を告げるチャイムが鳴った。
本を閉じて壁の時計を確認し、訪れたのは年若い恋人だと確信すると立ち上がり、まずはカップを片付けてからゆるりとインターホンへ足を向ける。
壁に埋め込まれた小さな液晶の中、エントランスホールの俯瞰カメラが、応答までの待ち長い時間にそわそわと肩を揺らすエースを映していた。
そんな姿を一方的にを眺め、ボタンに手を伸ばす。
「よう、入れよい」
おれの声を聴くなり、はっと明るくなる表情に、つられて口元が綻ぶのを自覚する。
へらりと笑って遠ざかるエースは、何か答えたようだが慌ただしくていまいち聞き取れない。
数分と立たず、同じような調子で飛び込んでくるのだろう姿を思えば、ふと笑みの溶けた息が漏れる。
再びキッチンに立ち、エースの分もカップを出しながら、ぼんやりとおれの頭は先程の笑顔を反芻する。
思えば、彼奴に今抱く感情へと育つものを芽生えさせたのは、ああいう場面だった。
客人か届け物か勧誘か。それだけが分かれば十分と一瞥する程度だったあの画面に、ある日違和感を覚えた。
よく配達に来る『いつでも愛想が良く快活にバイトに励む好青年』が、らしくなく硬い表情で立っていた。
読みとれるのは不安だか、緊張だか。
ちらちらと左右に逸れてはこちらを向く視線が、実際に見つめているものはただのレンズだが、その中に何かを…探すような瞳。
とはいえ、さほど気にせずに応答したおれは、その瞬間に、あの小さな画面に目を奪われた。
おれが、探されていたのだと、何よりも雄弁な瞳に告げられた。
あんなものを愉しみに眺める、なんて、滑稽な話だ。
しかしあそこに映るエースは、おれ以上に滑稽で、そして可愛いと思う。
少し控えめに注いだ珈琲にミルクを足して、とぷりと沈んだ白が広がり混ざり合う様は悪いものではないなと思うが、続けて放りこむたっぷりの砂糖でやはり自分では入れないと思い直す。
ぐるぐるとスプーンを回している間に、再びのチャイムが鳴った。
[しずまる]
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