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2024.11.20 Wednesday
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忘れ物?
2012.01.27 Friday
すみません、びっちの続きはまた後日…!
今日は、ちょっと違う衝動が迸りまして…
一緒に暮らしてるらしい2人の日常ー
今日は、ちょっと違う衝動が迸りまして…
一緒に暮らしてるらしい2人の日常ー
翌日に持って出る事を忘れては困る物がある時、エースはそれをリビングのテーブルの隅に置く。
此処ならば自身の目につき易いから、との言い分は甚だ説得力を欠いていて、バタバタとスルーして玄関へ向かうエースを引き留めてそれを持たせてやるのは、マルコの役目のようなものだ。
初めの頃は、こんな所ではなく先に鞄に入れておくだとか、小言じみた提案をしてやっていたマルコだが、慣れる内にそれがエースの自分への無意識の甘えのような気がしてきて、いつの間にか、その場所にある物を気に留めておく癖が付いていた。
だからそこに何かが置かれていると、またか。などと溜め息を付く振りをして自分の甘さを自嘲するのだが、いつも通りにその場所へ目を向けて、思わず足を止める。
大体置かれている品物は、提出の義務づけられた書類であったり、レンタルショップの袋であったりと、なんだか素っ気無い物ばかりである事が常だ。けれど今日は其処に、全く毛色の違うものが置かれている。
それが何であるかの察しが付くと同時に、マルコは小さく舌を打った。
数日前、エースは今日にあたる日を指しながら、友人の誕生祝いにサプライズを企画しているのだと浮かれていた。
珈琲の抽出を待つ間、そうかそうかと聞いてやっていたものの、話す程に楽しくなってしまったらしい様子に、段々と面白く無いような気持ちになってしまった。
こちらは内心で大人げなさを叱咤しながら、心を鎮める挽きたての珈琲を待っているというのに、ついにエースはたっぷりと珈琲を蓄えたサーバーを握ったままで手を止めて、どんなことをしてやるべきかと自分にも意見を求めて来る。
それより珈琲を、と返した声が少々鋭くなった。エースは、そうだったと笑ってこちらを優先して、それからまた浮かれた調子に戻って、ひとりでああでもないこうでもないと続けた。
それは取り立てる必要も無さそうに過ぎていったが、マルコの中に密かな失態として残ったシーンだった。
回想は、ドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきて途切れる。
「んじゃ行って来る!!」
やはりいつも通りに、エースは焦った顔を覗かせただけで玄関へ向かう。
マルコは、可愛らしくラッピングを施された小さな包みを拾い上げ、幾分ゆったりとした歩調で後を追う。
「こら、忘れ物だよい」
追い付いたのはちょうど、座り込んで引っ張っていたブーツに足が嵌ったところで、エースはそのままこちらを仰いで振り返り、ニィっと悪戯に口の端を上げてみせた。
「それな、違ェんだ!」
マルコは未だ包みを持たされたまま、なんだか勝ち誇ったようなエースの意図を掴めずにいると、立ち上がったエースが今度こそ愉しそうに笑って続ける。
「それは、マルコに。彼奴のプレゼント買いに行ったらさ、それ、あんたに似合いそうだったから」
今度ははにかんで見せて、そんな事を言うものだから、マルコは思わず言葉を失って、代わりに力の限り抱き締めてやりたい衝動に駆られ、その衝動との闘いを余儀なくされる。従ったらきっと、離してやれない。そのまま押し倒すなり、今履いたばかりのブーツのままで構わないから寝室に連れ込んでやりたくなる。
おそらくエースもまた、数日前の何てことの無いあのやり取りの中で、大人げなく拗ねたマルコの事を、同じように仄かに心に引っ掛けていたのだろう。
一瞬に駆け巡った物騒な想いを、なんとか若い恋人に気付かれない内に押し込めて、
此処ならば自身の目につき易いから、との言い分は甚だ説得力を欠いていて、バタバタとスルーして玄関へ向かうエースを引き留めてそれを持たせてやるのは、マルコの役目のようなものだ。
初めの頃は、こんな所ではなく先に鞄に入れておくだとか、小言じみた提案をしてやっていたマルコだが、慣れる内にそれがエースの自分への無意識の甘えのような気がしてきて、いつの間にか、その場所にある物を気に留めておく癖が付いていた。
だからそこに何かが置かれていると、またか。などと溜め息を付く振りをして自分の甘さを自嘲するのだが、いつも通りにその場所へ目を向けて、思わず足を止める。
大体置かれている品物は、提出の義務づけられた書類であったり、レンタルショップの袋であったりと、なんだか素っ気無い物ばかりである事が常だ。けれど今日は其処に、全く毛色の違うものが置かれている。
それが何であるかの察しが付くと同時に、マルコは小さく舌を打った。
数日前、エースは今日にあたる日を指しながら、友人の誕生祝いにサプライズを企画しているのだと浮かれていた。
珈琲の抽出を待つ間、そうかそうかと聞いてやっていたものの、話す程に楽しくなってしまったらしい様子に、段々と面白く無いような気持ちになってしまった。
こちらは内心で大人げなさを叱咤しながら、心を鎮める挽きたての珈琲を待っているというのに、ついにエースはたっぷりと珈琲を蓄えたサーバーを握ったままで手を止めて、どんなことをしてやるべきかと自分にも意見を求めて来る。
それより珈琲を、と返した声が少々鋭くなった。エースは、そうだったと笑ってこちらを優先して、それからまた浮かれた調子に戻って、ひとりでああでもないこうでもないと続けた。
それは取り立てる必要も無さそうに過ぎていったが、マルコの中に密かな失態として残ったシーンだった。
回想は、ドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきて途切れる。
「んじゃ行って来る!!」
やはりいつも通りに、エースは焦った顔を覗かせただけで玄関へ向かう。
マルコは、可愛らしくラッピングを施された小さな包みを拾い上げ、幾分ゆったりとした歩調で後を追う。
「こら、忘れ物だよい」
追い付いたのはちょうど、座り込んで引っ張っていたブーツに足が嵌ったところで、エースはそのままこちらを仰いで振り返り、ニィっと悪戯に口の端を上げてみせた。
「それな、違ェんだ!」
マルコは未だ包みを持たされたまま、なんだか勝ち誇ったようなエースの意図を掴めずにいると、立ち上がったエースが今度こそ愉しそうに笑って続ける。
「それは、マルコに。彼奴のプレゼント買いに行ったらさ、それ、あんたに似合いそうだったから」
今度ははにかんで見せて、そんな事を言うものだから、マルコは思わず言葉を失って、代わりに力の限り抱き締めてやりたい衝動に駆られ、その衝動との闘いを余儀なくされる。従ったらきっと、離してやれない。そのまま押し倒すなり、今履いたばかりのブーツのままで構わないから寝室に連れ込んでやりたくなる。
おそらくエースもまた、数日前の何てことの無いあのやり取りの中で、大人げなく拗ねたマルコの事を、同じように仄かに心に引っ掛けていたのだろう。
一瞬に駆け巡った物騒な想いを、なんとか若い恋人に気付かれない内に押し込めて、
言いようのない愛しさと、少しのバツの悪さに、マルコは柔らかく微笑んだ。
「ありがとうよい」
へへ、と照れ臭そうに返したエースが、待っているように思えて歩み寄り、頬を撫でて唇を重ねる。
「ありがとうよい」
へへ、と照れ臭そうに返したエースが、待っているように思えて歩み寄り、頬を撫でて唇を重ねる。
エースはやはり喜んで首を傾けて、離れる時にはとても甘く鼻にかかった息を洩らした。
***
***
「ん…行かねェと」
「ああ」
「成功するかな」
「成功させろよい、そいつのお陰だからな」
受け取ったばかりの包みを揺らして言うと、エースはまた可笑しそうに笑う。
「じゃ、マルコも祝ってやってよ」
「…仕方ねェな」
そういう訳で…
やすまる、誕生日おめでとう!(よい)
[しずまる]
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