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エースが踊ってるところこそ、一番書きたかったんですが、長々考えすぎていつまでも続けられない感じになりそうだったので思い切ってバッサリしちゃいました…難しいですね、動きのある描写って…。
諦めてはいないので、いつかリベンジしますっ。
まるっきりのノープランですが、思いがけず続く雰囲気になったのでまだ続ける?かもしれないです。
そのときはまたどうぞお付き合い願いますっ
[しずまる]
暗闇の中に、紅く色の付いた光が差した。
光の中心には金属のポールが立っていて、けばけばしい光を無機質に輝り返している。
ちょっとした吹き抜けくらいの高さから延びるそれらだけが浮かび上がる空間、誘われるように人々の目は上へ向かう。
彼らが天井を見上げている姿が見える訳ではないが、期待や欲望などの思念が其処へ集まる気配を確かに感じる。
始まりを報せるように再び爆音が鳴り響けば、歓声もまた、負けじと張り上げられた。
するり、と。
その動きはまるで動物で、天井に巣食ったなにかが、この騒ぎに追い立てられたかのようだった。
それほど滑らかな動作で現れた肉体が、ステージからおおよそ3メートル程の高さで留まる。
細いポール1本に、絡みつく腕と脚とがしなやかに長く、押し付けられた身体は引き締まり、均整のとれたシルエット。
肌が触り心地の見事なすべらかさである事は明らかで、安っぽい照明も、あれを照らせば途端に妖しいものに見える。
暗いメイクの施された瞼が持ち上がり、露わになった瞳は、真っ直ぐに此方を捉えた。
ひらめくように微笑んで、それから、また滑るように、歓声に迎えられ降りてゆく。
じゃれて背を擦り付けるように、あらぬものに模して求めるように、ポールと戯れ身を操る度、フロアの熱が増して渦巻く。
狭いステージで奔放に伸びる手足も、時折やけに無邪気に見える表情も、こんな場所で、こんなにも多くの汚らわしい視線に晒され、口汚く下卑た声を浴びるべきものではないと思わせる。
人はあれに、憐れむ振りをして憧れて、同時に堪らなく煽られるのだろう。
マルコは、熱狂的と呼ぶに相応しい騒ぎをまるっきり他人事と云うかのように静かに、視線を持ち上げたのだ。けれど情けないことに、現れたのが男であった事、それに驚く隙もなかった。
美しく、幼く、健全で、妖艶で、精悍で、儚気。
でたらめに集めたような形容の全てを魅せる、漆黒に囚われてしまった。
「どうです?」
堪らないでしょう、と下卑た声に邪魔され気付くと、傍らには肌も露わな女の慣れた誘惑の腰付きがあり、その向こうで男は、別の女を既に膝に乗せていた。
問うておきながら答えなど求めて居ない様子に無視を決め、ステージへと視線を戻すと、傍らの女の方が笑う。
「つれないのね」
VIPフロアに相応しく洗練された女の蠱惑的な微笑みが、不快に波立てられた心を多少鎮め、その上、
「彼を呼ぶ?」
察しの良い提案に顔を上げると、彼女は少し肩を竦めて笑みを深くする。その表情が、そう珍しく無い事であるのを示していた。
「名前は」
「エースよ」
お前はと訪ねると、優しいのねとまた笑った女はベイと名乗った。
彼と2人になりたければ後で案内する、そう囁く声に頷く。
未だ若い獣のようにしなやかに、赤い光の中で躍る、エース。
乾きを覚えてグラスを傾けると、今度はやけに美味い気がした。