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ペンキ屋4
2012.03.26 Monday
出来心のペンキ屋さん、やっと最終回ですー
すみませんでしたっ
色んな意味でベタベタな2人が書きたかった、だけだった…
[しずまる]
すみませんでしたっ
色んな意味でベタベタな2人が書きたかった、だけだった…
[しずまる]
「お前、集中力ってもんは無ェのか」
脚の痺れが引く頃には、エースは反撃も儘ならないほど疲れきって肩で息をして、ぐったりとした身体を支える掌は、またべったりとパステルオレンジに塗れていた。
責め苦が通り過ぎ、一つ山を越えた気分のところ、また説教が再開された事にちょっとした絶望も味わった。
反発する元気も削がれてしまって、こうなったら今度こそはちゃんと聞いてスムーズに終わって貰い、早く飯を食う。目標をそう定めた、そのつもりで、今度は胡座をかいてマルコを見つめた。
(集中力くらいあるっての…あれ。マルコ膝のとこオレンジ?
あー、さっきおれが暴れて付けたのか。
マルコが塗ってた色……あった!けどすっげェな、袖ん所にちょっとだけかよ。
おれなんかベッタベタなのになー。)
「大体、何考えてたらこうなるんだ。もう基礎以上の事教えた筈だろい」
(何、って
今日はいい天気だったから屋根塗んのは楽しそうだなーとか。
だから多分、マルコも機嫌イイはずで…だからやっぱ楽しそうだなーとか。
早くそっち行きたいのに、なんであんたみたいに塗れねーのかとか、
そんで、仕事してるとことか…その手とか)
「マルコかな」
「あ?」
「マルコの事だ、考えてたの」
今も、あの時も、取り留めなく色々な事を思った筈であったけれど、結局のところそう纏めてしまえる事に気付いて、素直にそう口にしていた。自然に、微笑んでもいた。
不覚にも言葉を飲んでしまったマルコは、この上視線を逸らしてはしてやられた気分が増しそうだったのでそれを耐えた。もうこれ以上の説教を続ける気は失せてしまったが、こんな事で絆されて許したと思われる事は心外だったので、なんとか続ける言葉を探していた。けれど幸い、それを見つける先に一連の思考のみっともなさに気付けたので、かいた恥は誤摩化しの舌打ちひとつで済んだ。
「まったく、お前は」
「ごめん」
呆れた風に洩らすと、謝りながらエースはへらりと笑う。先程のマルコの舌打ちと似た意味の笑みだ。
「おれ、ちゃんと役に立つよ。もう囲まれねェ」
「当たり前だ、馬鹿」
転じて大真面目に告げられた大間抜けな宣言にマルコはつい軽く吹き出してしまって、小突かれながらエースも今度は愉しげに笑う。
もう夕暮れに空が染まり始めた。マルコは昼間の空の色のついた袖を捲って時間を確かめ、ふっと短く息を吐く。この部屋を塗り直すにしたって、一度乾いてからの話だ。屋根の方はもう片付いていて、進行予定に遅れがある訳ではない。
その場で膝を折ってエースと同じ高さに降りると、ぐしゃぐしゃと癖っ毛を掻き混ぜてやる。
「帰るぞ」
マルコがいくらか気を抜いた声で言うと、頭に置かれたままの手にだろうか、単純に帰れる事もだろうが、エースは心底嬉しそうな顔をした。
「やっと飯だな」
「おお、ちゃんと食っとけ。明日は3倍働かせるからよい」
軽口を交わしながら、2人は立ち上がらずに居た。
きっと、燃えるような色に呑まれているのだ。
オレンジの日の射す、オレンジの部屋。同じ色をべったり纏った手が肩に置かれても、指に絡んでも、マルコは咎めなかった。
頬になすられた時にはくくと笑って、エースの顎に仕返した。
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