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ついに今日だぜ誕生日
2012.03.24 Saturday
古めかしく薄茶けたラベルをこちらに向けてずらりと並べ、険しい顔で暫しそれらを眺めてから、その内の一つを選んで栓を抜く。
首を掴んでぐびりと一口煽ると、この時を待ち望んで濃縮されていた薫りに満ち、喉を通る深紅がそのまま血となり染み渡るような充足感があった。それなのに、いや、だからこそよりいっそう不機嫌を露わに、マルコは瓶をぶら下げて部屋を後にする。
探し回ってやる手間などかける気にはならず、通りがかった人影を呼び止めた。
おい、とかけた声に振向いた相手は自隊の隊員だったので、マルコが改めて名を呼び直すと、まだ入って間もない彼は僅かに緊張した様子でけれど少し嬉しそうでもあり、言外に現れる憧憬に触れて、マルコの険しく寄せたままであった眉間もほんの少し緩んだ。
「一番騒がしいのは何処だい」
食堂は、おおよそ予想した通りの様子だった。
いくつもテーブルを抱き込んでがやがやと騒がしい一団を見回す。
何時だろうと目的が何であろうと、初めに探すのはエースだ。けれどどんなに煩い場所でも聞き分けられる声は此処に無く、皿に突っ伏す姿も無い。
てっきり一緒になって騒いでいるものだろうというあてが外れて、小さく息を漏らしたところに、
「なァんだ、お前かよ」
けっ、と大袈裟に吐き捨てて、ならば出て来なければ良いだろうにサッチはわざわざ宴の輪を抜けてやって来た。
黙って横をすり抜けようとすると、すれ違う筈の瞬間サッチはぐるりと身体を返して、無遠慮な力でマルコの肩を抱く。
大人しく離れない事も知っていても、厚かましく体重を預けて来る事も良しとはせずにマルコは幾度か突き放し、やはりサッチはそれでも幾度でも凭れようとする。
結局2人連れ立って隅の席に移るまでの一連は、傍からすれば立派な予定調和である。
テーブルを挟むと、それぞれに、ただ自由に酒を煽る。
サッチはすっかり出来上がった上機嫌で、遠巻きに、中程で盛り上がる兄弟達の様子を眺めていた。
マルコと同じくらいに酒に強い筈だが、雰囲気には滅法酔い易いのだ。
それをマルコが、単純だな、と言えば、ロマンチストなのだ、と返る。そして、そうかいナルシスト、と続けた後には大喧嘩。そんなやり取りを、若い頃には繰り返したものだった。
「…何度目だったか」
「さァ?おれァ永遠の17歳ですから」
ハッ、とどちらもがくだらなそうに笑って、
それから漸く、木製のジョッキと硝子瓶の底を鈍い音でぶつけ合った。
首を掴んでぐびりと一口煽ると、この時を待ち望んで濃縮されていた薫りに満ち、喉を通る深紅がそのまま血となり染み渡るような充足感があった。それなのに、いや、だからこそよりいっそう不機嫌を露わに、マルコは瓶をぶら下げて部屋を後にする。
探し回ってやる手間などかける気にはならず、通りがかった人影を呼び止めた。
おい、とかけた声に振向いた相手は自隊の隊員だったので、マルコが改めて名を呼び直すと、まだ入って間もない彼は僅かに緊張した様子でけれど少し嬉しそうでもあり、言外に現れる憧憬に触れて、マルコの険しく寄せたままであった眉間もほんの少し緩んだ。
「一番騒がしいのは何処だい」
食堂は、おおよそ予想した通りの様子だった。
いくつもテーブルを抱き込んでがやがやと騒がしい一団を見回す。
何時だろうと目的が何であろうと、初めに探すのはエースだ。けれどどんなに煩い場所でも聞き分けられる声は此処に無く、皿に突っ伏す姿も無い。
てっきり一緒になって騒いでいるものだろうというあてが外れて、小さく息を漏らしたところに、
「なァんだ、お前かよ」
けっ、と大袈裟に吐き捨てて、ならば出て来なければ良いだろうにサッチはわざわざ宴の輪を抜けてやって来た。
黙って横をすり抜けようとすると、すれ違う筈の瞬間サッチはぐるりと身体を返して、無遠慮な力でマルコの肩を抱く。
大人しく離れない事も知っていても、厚かましく体重を預けて来る事も良しとはせずにマルコは幾度か突き放し、やはりサッチはそれでも幾度でも凭れようとする。
結局2人連れ立って隅の席に移るまでの一連は、傍からすれば立派な予定調和である。
テーブルを挟むと、それぞれに、ただ自由に酒を煽る。
サッチはすっかり出来上がった上機嫌で、遠巻きに、中程で盛り上がる兄弟達の様子を眺めていた。
マルコと同じくらいに酒に強い筈だが、雰囲気には滅法酔い易いのだ。
それをマルコが、単純だな、と言えば、ロマンチストなのだ、と返る。そして、そうかいナルシスト、と続けた後には大喧嘩。そんなやり取りを、若い頃には繰り返したものだった。
「…何度目だったか」
「さァ?おれァ永遠の17歳ですから」
ハッ、とどちらもがくだらなそうに笑って、
それから漸く、木製のジョッキと硝子瓶の底を鈍い音でぶつけ合った。
「あーーっおれの残しとけっつったじゃん!」
こちらのやり取りを待ったかのようなタイミングで、少し遠くに聴こえた声。
やはり此処に居たのかとマルコは笑みを深くして立ち上がる。
「えぇー、それくんねーの?おれンだろ?」
と、今度は傍らからなんとも情けない声が掛かる。
持参した酒は確かに此処に残して行くつもりのものだったけれど、そう言えばもう必要なかったなと思い直して、しっかり手にしたままで歩き出したのだ。
「やらねェよい。もうおれのから貰っただろい」
「おれの…ってお前ね…なんだよただの嫉っ……ナンデモナイです」
サッチはそれ以上は謹んで、うらめしそうに名残惜しそうにラベルを眺める。
一方、サッチを威圧してから再び群れの方へと向き直ったマルコと、エースは目を合わせた。
複雑そうな表情になってしまっていただろうか、マルコの目が、どうしたと目で問うて来た。
どうしたもなにも。ちょっと用を足しに食堂を離れていた間に、食べかけだった筈の料理が影も形も無くなっていたのが最悪だった。だけどもしかしたらそれよりも、とエースは口を閉じ結んで難しい顔をする。
実はエースが戻って来たのは少し前で、するとマルコが居て、だから喜び声をかけようとしたのだが、なんというかそれが躊躇われる空気を感じた。あれが、あの2人の間の祝い方なのだと、何となく分かったのだ。うらやましいような、プレゼント選びに浮かれていた自分がひどく餓鬼なような、やはり、羨ましいような。
そう、簡単に言えば
(なんか…面白くねェ)
「エース」
目を合わせたまま、仏頂面でいる事を訝しんでマルコが呼んでも、エースはまるで聞こえていないようだった。
しかし代わりにサッチは顔を上げ、2人の間を視線で行き来し、ははぁんと片眉を持ち上げた。これはどうやらチャンスのようだ。
「エース!!」
目覚ましのつもりの大声でサッチが呼ぶと、今度はエースもハッとして、難しく寄っていた顔がふと緩んだ。
マルコは、サッチが何かを企んだことを気取るも、残念ながら間に合いはしなかった。
「マルコが美味い酒飲ませてくれるってよ!一緒に飲もうぜ!」
「あァ?おい、だれがお前に…」
「飲む!」
帰って来た明るい声に、マルコは歯噛みし、サッチはにんまりとする。
エースは数歩の距離を駆け寄って、マルコに飛びつく。
「おれも混ぜろよな!」
拗ねた風に吠えて見上げるエースは可愛くて、そして漸く、先程の表情の意味を理解したマルコは、当たり前だと笑った。
そうして嬉しくなったエースも、酒にありつけるサッチも笑う。
さー飲むぞー!
てめェ
なんだよ、やっぱエースが居ねーとだろうが
ああ、要らねェのはお前だよい
っはは、喧嘩してんなよ!せっかくめでてェんだからさ!
そーだそーだ!暴力パインー
覚え易く今日を命日にしてやろうかい
マルコ、あんた案外大人げねェな
なっ
言われてやんのー!…え?
サッチ
ぎゃっ、おま!おれ今日主役なんだけど!
あはは
こらエース!笑ってないで助け
っぶ、ははは
いやァァァァァ——……
***
まさかのフェードアウト!
gdgdでごめんなさっち!!
サッチおめでとううううう!
[しずまる]
[しずまる]
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