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ひとまずこういう形に落ち着いたようです。
短いですがつづきからどうぞー
[しずまる]
例えばそれは人混みの中に飛び出し、迫り来る容赦ない靴底を2つ、3つ掻い潜って転がられてしまえば、簡単に逃亡を許せる存在。
と、そのくらいの重みを一般的と定めたら、世の中には恐らくおおよそ同数、這いつくばって追う人々が居て、同じくおおよそ同数、地に付くや否や拾う事など考えもせず切り捨てる人々が居る。
居合わせた男達は、ほぼ洩れなく後者だったが今ばかりは違って、固唾を飲み、祈る思いで注視している。
コインは、普段の惨めを雪ぐように悠々と、気品すら纏って宙を舞う。
そう弾いたのは金髪碧眼の(決して間違いはないが、ただこう紹介するには躊躇われる風貌の)男で、ただ一人、余裕を示すに十分な気怠げな眼をして、口元をゆったりと歪めていた。
キンと微かな音で未来が決まるのを邪魔して若い男が一人、何事か怒鳴りながら躍り出た。まず「不死鳥」と呼び、「死神」と改め称し、どちらにせよ死を与える事は容易で無さそうな相手に「くたばれ」だとかと発して引き金を引く。しかし、というべきか、やはりというべきか、その企ては叶わなかった。
放たれると信じた銃弾の代わりに銃身が爆ぜ、襲いかかるように大きくなった炎に包まれ彼は火達磨となって、ついには錯乱の内に喚きながら数十階の高さから身を投げる。
そうして取り残された仲間は戦意を無くし項垂れ、死神も碧眼を足元へ伏せる。
コインは表だ。
「もっとマシに殺してやれたってのに」
マルコは、繋ぎ合わせれば大体そんな具合のありふれたラストシーンになる予定の、たった一言を呟いた。
必要以上の間を持った後、小気味良い音とカットの声が同時に響くと、不自然な静寂は去り、自然とも言えない賑わいが訪れる。
肩を組んで来る監督も、うっとりとして珈琲を勧めるスタッフも、当たり障りのない態度を返して携帯を手にしてしまえば簡単に退くので、マルコは意図を持った風を装って画面をなぞりながら、特に意図を持たない風に少し離れた椅子へ向かった。
ひとつ空けた隣に待つ先客が目的とは誰にも気取られないだろう。マルコはそういう職業の男だ。
「よく燃えたな」
「ん、よく落ちた」
楽しげな声で応えたエースは、椅子の上で仰向いて身体を投げ出して、顔にはタオルを乗せ、まるっきり疲れて眠っているポーズでいた。
ハードな仕事を全て終えた後なので誰にも咎められないし、マルコほど上手には出来ない事を承知しているのでおおよそ賢明と言えた。(何故おおよそかと言うと、本当に眠ってしまう可能性も低くはないからだ。)
ともかく傍目から見れば、人を避けて通話している主演俳優と、疲れきって眠っているスタントマン。余程の用事がなければ、共演者もスタッフも距離を詰めては来ない。
こんな場所で露骨な話などする訳ではないが、警戒が必要である事は間違いない関係だし、単純に『ふたりきり』に近しいに超した事はない。
「どうだった?」
「最高に情けなかったよい」
「マジで、みっともなかった?」
「ああ」
「はは、やった。よかった」
どこか可笑しな話だが、今回の役柄はそうなので、エースは朗らかに喜んだ。
その表情をタオルが覆っている事を惜しく思うし、きっとあからさまだろうからと安心もする。
「あんたは格好良かった」
「それが役目だ」
「うわ、可愛くねえ」
「それは役目じゃねェからな」
軽口に応えながらも、可愛い恋人に褒められて嬉しくない筈がないので、マルコの声色は余りに柔らかい。
以前こうしていた後に、大切な人とのお電話だったんですね、などと言われてしまってからというもの、ちゃんと自覚も持っている。
そろそろ、チラチラと此方の手の空くタイミングを窺う視線が増えてきた。
頃合いかとマルコが立ち上がると、エースにも伝わった。
「あんたにやられんの好きだよ」
仕事の話であり、
そうでない話でもあるのだろうと、マルコは都合良く聞き取った。
「おれもお前をやるのが好きだ」
***
なんかいつの間にか、マルコが俳優ならエーススタントマンじゃないかな、きっとそうだ!!
ってなりました。
学パロとかもそうなんですけど、周りにバレちゃいけない2人が好きだーーだー…だー…