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夕方
2012.10.05 Friday
マルコ誕、後編です。
マルコぉぉぉぉぉ…
[しずまる]
マルコぉぉぉぉぉ…
[しずまる]
案の定、というやつだ。
マルコのスペースがあった筈のベッドのど真ん中で、大の字のエースが薄目を開けたのは、夕方の事だった。
ううんと唸って寝返って、再び目を閉じたとき、瞼の裏の名残がオレンジ色だったので、あれ?と思う。
波打ったシーツに、窓の形を映している、これは夕日だ。
途端に、今日がなんの日だったかが、ノックアップストリームの勢いで思い出されて飛び起きて、書きもの机の上の時計が指す時間に叫ぶ。
「ぶっ。えええええ、嘘だろ!!」
くっく、と笑う声がした。
時計の手前で海図に向かっていたマルコがペンを休ませた。
がたた、と椅子を引く音がする。
「おはよい」
「早くねェし!つかなんで、モビーじゃん、宿は?」
「お前、どこの宿かもまともに言わねェで潰れたろい」
近付くマルコを、エースは恨めしげに睨め付けていた。
もしくはマルコがエースの瞳が向く場所に合わせていたかのように、エースが ぐっ と言葉を失って俯くと、マルコはベッドに腰掛け、臥せらせた視線の先に首を傾いだ。
「せっかく、完璧に…」
「うん?」
「…あの宿が、ロマンチックがどうたら…とにかくここらの海で最高だって聞いて」
「そうかい」
「そんで今日早く起きたら近くに、コショ?レアな古本ばっかの市もあるとか、食いモンも美味いらしいんだ、あと、小せェけど遊園地もあるって。それに」
らしくなくボソボソとしたエースの声に優しく耳を傾けていれば、次第に当初の計画が明かされ、
おそらくは「自分が嬉しい事はきっと相手も嬉しい」理論に基づいて、自分を喜ばせようとしての内容を知る程に、マルコは言葉を失っていく。
聞いているだけで疲れそうだ、とか、今まで寝ていてくれて助かった、最終的にお前好みの場所ばっかりじゃないか、とは、おそらく言うべきではない。
勿論気持ちは嬉しいのだが、残念だとか、計画を褒める類いの事を言って、今から連れ出されても敵わない。
剰え若者は、本当に申し訳なさがって、
「ごめんな」
などと言うし。
少しの間の逡巡の後。
マルコはまあ、最も簡単に収める方法を選んで、つまりは、口を塞いで。
愛おしいほど単純に舌先を差し出したエースの顎を、殊更優しく撫でてやった。
こんなふうに言葉に出さないでいるところが知れたら、
自分の想いに対して不誠実だ、と、エースは憤慨するだろうか? と考えた。
けれどその場合は、三ヶ月後にしてやるべき事を知れた事を喜んでいることも、
今これから、どうしてくれようと考えているのかも、知られてしまうのだろうから、
きっと大丈夫だと結論付けた。
「エース」
促すように、触れたままの口で囁くと、
エースはいつの間にかとろけたような眼になっていて、
「誕生日、おめでと」
これしかなくてごめん、と書いてあった。
「完璧だ」
「…どこがだよ」
失敗っぷりに耐えられなくなって、エースがやっと、微笑みをくれる。
これで本当に、完璧になった。
「おれ」は、お前の誕生日に好きなだけやるから。
今日はお前を、おれに渡せよい。
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